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耳の病気
突発性難聴
ある日、突然に神経性(感音)難聴が起こる疾患で、ほとんどが片側の耳のみである。
症状・特徴
難聴は突然に起こり、通常初期状態より悪化することはありません。たいてい徐々に良くなるか、不変です。
中耳炎などのはっきりした疾患はなく、原因不明の感音難聴です。耳鳴りは多くの症例で合併し、聴力の改善とともに軽快するが、高音部の耳鳴りが残ることもあります。めまいは半数くらいに併発し、大部分は軽いもので早期に消失することが多いとされています。
診断
症状の起こり方や外耳炎・中耳炎などがないことを確認し、純音聴力検査で感音難聴が存在することにより診断します。
ただ、元々慢性中耳炎があったり、メニエル病などがあったりすると診断に困ることもあります。
治療・注意
早期の治療が非常に重要で、3~4週間程度聴力が固定し、それ以上回復しないとされています。
一般には薬物治療がなされ、ステロイドホルモン剤の点滴や内服の漸減投与(投与量を徐々に減らしてゆく)が中心になり、ビタミン剤や循環改善剤も投与されることも多いです。
その他、高圧酸素療法、星状神経節ブロック、プロスタグランディン治療が行われることもあります。
難聴が高度なほど、めまいが合併するなど、完全に治りにくい(後遺症を残す)と言われています。
鑑別疾患
メニエル病、聴神経腫瘍、外リンパ婁、心因性難聴、変動性難聴
メニエル病
耳が原因で起こる末梢性めまいの代表疾患です。めまいと言えば、メニエル病と言われるぐらい有名な病気ですが、めまい全体から見れば、最も頻発するものではありません。元々、男性に多いとされていましたが、最近は女性に増加傾向があり、40~50歳代が好発年齢です。
症状・特徴
めまい、耳鳴り、難聴がメニエル病の3大症候として知られています。突然、天井が回転するようなめまいが起こり、耳鳴りや難聴(特に耳が詰まったような感じ=耳閉感)が合併します。
めまいは多くは回転性で30分以上起こることが多いのですが、横揺れのようなめまいもあります。また、同時あるいは少し時期をずらして耳鳴り、自閉感、頭重感、肩こりなどが随伴します。 これらは必ず併発するわけではありません。 もちろん自律神経症状の吐き気、嘔吐、冷や汗などもたいてい起こります。
ただし意識障害、複視(物が2重に見える)、顔面神経麻痺、構音障害(喋りにくい)、知覚異常(しびれや麻痺)等の中枢神経症状はありません。 逆にこれらの中枢神経症状が存在すれば、腫瘍、脳梗塞などの中枢性疾患を疑い、脳内の詳しい検査が必要です。
原因
耳の奥の内耳に起こる内リンパ水腫が原因とされていますが、その本態は不明です。自律神経機能異常、アレルギー、自己免疫異常、ストレス、等々が考えられています。
誘因としては、精神的、肉体的疲労時、睡眠不足、過労等があげられ、性格として神経質で、几帳面な人に多いようです。
診断、検査
昭和49年厚生省特定疾患メニエル病調査研究班の診断基準があります。
(1) 回転性めまい発作を反復すること。
(2) 耳鳴・難聴などの蝸牛症状が反復・消長すること。
(3) (1)、(2)の症候をきたす中枢神経疾患、ならびに原因既知の、めまい・難聴を主訴とする疾患が除外できる。
上の(1)(2)(3)すべてを満たす症例がメニエル病確実例、(1)(3)を満たす症例が前型メニエル病、(2)(3)を満たす症例が蝸牛型メニエル病とされます。
ただ上記の診断基準以外にグリセロールテスト、フロセミドテスト、蝸電図検査等が行われ、診断の手助けとします。
治療・注意
発作直後の急性期には患側を上にした頭位で安静にして、メイロン、制吐剤、精神安定剤などの点滴や内服を行います。 ある程度症状が落ち着いたら、抗めまい剤や制吐剤、ビタミン剤、利尿剤、安定剤などの内服で徐々に日常生活に復帰してゆきます。聴力低下が著しい場合は、ステロイド剤の投与も行われます。
耳鳴
症状・特徴
耳鳴とは耳の中や頭の中で音が聞こえることです。
実際には周囲で何も音がしないのにキーンやシーン、ワーンといった音が感じられます。
そのため周りがやかましい所ではあまり感じず、夜や朝の静かな時に強く感じることが多いようです。耳鳴りは最近の現象ではなく、古代から耳鳴を感じてきたようです。
体が疲れている時にはキーンという高い音が短時間耳の奥で鳴る経験をしたことがあると思います。健康な人でも周囲音を遮断した無響室に入るとシーンといったような音が聞こえてきます。耳という器官は敏感なために体内の血液の流れる音とか、筋肉や関節の動きの音なども時に聞こえます。
大きな耳鳴となると周囲がにぎやかなのにもかかわらず、音が聞こえてきます。 そしてこれにより不快感や不眠、ときにうつやイライラなどのストレスを引き起こします。
また耳鳴は、一般的に難聴とともに出現することが多いといわれています。
耳鳴は本人にしか聞こえない自覚的耳鳴と外部から聴取可能な他覚的耳鳴に分類されます。他覚的耳鳴は筋肉の痙攣や血管の拍動音、関節音が原因で本人以外でも聞くことができます。ただほとんど耳鳴で問題となるのは、本人にしか聞こえない自覚的耳鳴です。
自覚的耳鳴は、多くの場合内耳の疾患により起こります。
例えば、突発性難聴、音響外傷、老人性難聴、メニエール病、低音障害型感音難聴などの難聴に附属して出現することも多いのです。
それ以外でも聴神経腫瘍や脳腫瘍、薬物性耳鳴、高血圧症・糖尿病・動脈硬化、ストレス、筋痙攣性のこともあります。また中耳炎による音の伝導性変化により血管拍動性耳鳴がすることもあります。
音は耳介から外耳道、鼓膜を経て中耳から内耳へと伝わり、さらに聴覚中枢に行って音を感じます。従って、耳鳴は聞こえの経路のどこに障害があっても出現する可能性があります。実際に内耳を破壊しても耳鳴がするとも言われています。
また、これらの道筋に関連のある血管や筋肉あるいは骨に異常が起きても、耳鳴は起こりえます。もちろん耳垢や中耳炎といったものでも耳鳴りは起こりうる可能性があるわけです。さらに鼻が悪くなって耳管の機能が障害をうけることにより耳鳴がする場合もあります。
急に生じた耳鳴が突発性難聴、音響外傷などの自覚症状であることもあり、早めの耳鼻咽喉科受診をお薦めします。
一般に人口の10パーセントから20パーセントの人が耳鳴りを感じているといわれています。さらに年配になるとその比率は高くなるといわれています。
ただ耳鳴のある全員が苦しみ、悩んでいるわけではもちろんありません。
けれどもおよそ人口の5パーセントの人が持続的な耳鳴を苦痛に感じているともいわれています。また耳鳴のほとんどの人においては(90パーセント以上)難聴が認められます。
検査
耳鳴の検査としては、まず視診をして異常がないかを確認します。
次に鼓膜の動きに異常はないか、チンパノメトリーを行ったり、聞こえの程度を見るため標準純音聴力を行います。
さらに耳鳴検査としていくつかの検査がありますので、耳鳴の大きさと音の高さ、種類(どのような音なのか)を検査します。
治療
耳鳴にはいろんな治療方がありますが、逆に決定的な治療法はありません。
以下は主な治療法です。
- 薬物治療・・・内服薬、漢方薬、注射薬、鼓室内注入
- 音による治療・・・マスカー療法、TRT療法、補聴器、BGM
- 心理療法・・・バイオフィードバック法、心理カウンセリング、自律訓練法、催眠療法など
- 理学療法・・・鍼、灸、マッサージ、レーザー、電磁波、低周波など
- 食事療法・・・健康食品
以上のようにたくさんの治療法があります。もちろん、中耳炎などのように原因のはっきりした耳鳴りは、まだ原因疾患の治療を行います。
また急性期の耳鳴は薬物治療により改善しやすいのですが、半年以上の慢性の耳鳴は治りにくいため、逆に様々な治療法が存在することになっています。
耳鳴のTRT療法とは
耳鳴のTRT(Tnnitus Retraining Therapy)療法(耳鳴り順応療法)とは1980年代後半に米国で提唱された耳鳴のモデルにもとづいた治療法です。1990年代より治療が始められ、欧米では急速に普及しています。特徴は耳鳴りを消失させてしまうというものではなく、耳鳴りを意識しないように順応するという点です。
無響室と呼ばれる音が殆ど聞こえない部屋にいると、ほとんどの人において耳鳴が聞こえてくることが知られています。 耳鳴りがあるから必ずしも異常ということではなく逆に耳鳴がないから正常であるということでもありません。
耳鳴は内耳や神経で鳴っているものの、その役割は二次的なもので耳鳴を苦痛に感じるかは中枢の問題です。 感情と深い関係にある大脳が強く関与し、耳鳴に対する不安や苛立ちがさらに自律神経系の失調をきたすことで、耳鳴りを一層強く意識してしまうという悪循環が生じてしまっていると考えられているのです。
私たちの周りにはいろいろな音があります。注意して聞くと冷蔵庫やエアコンの音、時計の音、パソコンの音も聞こえるかもしれません。 しかし普段はそれらの全ての音を意識して聞いているでしょうか。たいていは注意をすれば音があることに気づきます が、そうでなければほとんどの音を私たちは特に意識しません。私たちはどんな音を意識して聞いているのは音楽や会話などの必要な音、危険や異常を知らせる音なのです。
TRTは耳鳴の音をちょうど空調やファンの音と同じようなものにしてしまおうというものです。 TRTは耳鳴の音を無くしてしまう治療法ではありませんが、脳に不要な耳鳴の音を意識させなくする治療法です。例えば家の中の空調の音はほとんど気になりません。けれども意識して聞こうとすればやはり聞こえるはずです。
そこで耳鳴をエアコンの音などと同じように無視してもよい音と、認識するよう脳を再調整しようとする治療方法なのです。
TRTが成功すると耳鳴が気になることが次第になくなっていきます。
ただし、聞こうと思えば耳鳴の音はやっぱり聞こえます。
TRT療法は、発症して3ヶ月以内の急性の耳鳴は適応にはなりません。できれば6ヶ月以上して、ある程度症状が固定した方にお勧めしています。
TRTの実際
カウンセリングと音治療とからなっています。
①カウンセリング療法
耳鳴りのメカニズムを知ることで不要な不安を取り除き耳鳴りに対処できることを学びます。また問診表などにより耳鳴りによる心理的苦痛度、生活障害度がどの程度かを評価します。
②音響治療
- ノイズジェネレーターという雑音の出る器械を使用する・・医療機関で行われているのはこれです。
- FMラジオ等で局間ノイズを聞く・・・ノイズジェネレータの代りとして使用します。
- 音楽を聴く・・・BGMがあると耳鳴が気にならなくなります。
- 補聴器を使用する・・難聴の耳に外部の音が入ると耳鳴は和らぎます。
- 単に静寂を避ける・・周囲が騒がしければ、耳鳴はしませんので。
いずれの方法でも結構ですし、組み合わせることも可能です。
ノイズジェネレータによる治療
従来の「マスカー療法」のように大きなノイズを聞いて、「耳鳴り」を消してしまうのではなく、治療用ノイズが耳鳴りの7~8割くらいに聞こえるように、ノイズの大きさを調節します。
音は何種類かの内、自分の聞きやすい音を選んでもらいます。耳への装着時間は1日に6~8時間が推奨されていますが、あまりハードルを高くすると続きません。ですから1日1分でも5分でもよいので毎日使用してくださいと、指導しています。
もちろんTRTを始めてもすぐには良くはなりません。一般には効果は1ヶ月から3ヶ月ぐらいから出始め、1年から2年ほどで十分な順応が得られるとされています。その間耳鳴りはよくなったり、悪くなったりしながら改善していきます。
個人差がありますので、改善の状況は様々で完治したと思われる方もいる反面、 改善しなかったと感じる方もいますが、以前より悪化したと感じる方は少ないようです。
ただしTRTの音が聞こえないような高度の難聴者は対象になりません。
また、認知症の患者さん、精神科領域の病気をおもちの患者さんには不向きです。機械操作が全くできない方も続けることはできないでしょう。
また耳鳴りを完全に、あるいはすぐに消してほしいと求めている方もTRTを行うのは難しいでしょう。
本来、TRTは耳掛け型補聴器に似たTCI(Tinnitus Control Instrument)装置とよばれるノイズジェネレーターを使用し、耳に優しい快適な雑音を聞くようにしていました。一時期、TCIは販売が中止されていましたが、現在は元通り販売されています。
当院では音源としてTCIが持っていた4種類のノイズ(全く同じではない)+低音ノイズを作成して提供しています。近年発達しています携帯音楽プレーヤーを利用して、ノイズを聞いていただくことで代用可能です。
5分間バージョンはこのページよりダウンロードしていただき、各自ご使用ください。
また受診された患者さんには検査、カウンセリングの上、60分ノイズの提供をしています。ご自分でパソコンを扱える方にはCD-Rに入れた5種類のノイズを差し上げていますが、扱いが不慣れな方は当院のパソコンと持参の携帯プレーヤーを接続の上、直接ダウンロードいたします。
試聴およびダウンロード(mp3形式・5分版)
■使用法
ボタンをクリックすれば、windows media player で自動再生します。ファイルとして保存するにはマウスの右クリックで「対象をファイルに保存」を選んで、ダウンロードしてください。
※ご注意
ノイズをダウンロードして、ご自分で使用される場合、不測の事態が発生しても当方では一切責任を負いませんのでご了承ください。